2011/10/27

山田脩二|日本旅1961~2010

山田さんの写真集を買った





現在、淡路島に住んでいて「カワラマン」となった山田脩二さん
「カメラマン」としてのお仕事
1963年から日本中あちこち、風景やら人物やら建物やら
くっきりしたモノクロの写真
写真をじっくり見る
なんだろう?
この圧倒的な「何か」の正体は?

1970年の大阪万博の太陽の塔の顔は悲しげに見えるし
2000年に撮られてる東京ディズニーランドも
山田さんの写真の中ではちっとも「夢の国」なんかじゃない
すべてがモノクロのせいなのか
農村やら、通りすがりの子どもやら、仕事の合間にくつろぐおじさんやら
あんまり人がたくさん写っていない写真からは
楽しさやら、活き活きさが感じられるのに
船橋ヘルスセンターやら東京ビッグサイトで写している
ものすごい数の「人間」の写真からは、寂しさや、コッケイさも感じる
私はこの何枚かのすごい人数が写ってる写真が
すごく気に入っている
「感じる」のは見たほうの特権だから
まあ、私は私が感じたままでかまわないんだろう

山田さんが酔っぱらって、へろへろしてる時に会ったら
ちょっとボケた老人かと思ったけど
色々な珍騒動やら武勇伝を聞かされてるから
勝手に親しみを感じてしまってる

正直いって「写真」の良さってよくわからない
「写真集」というものの面白さもよくわからない
山田さんがどれくらい有名でスゴイ人なのかもよくわからない
この写真集の後書きを読んだら
篠山紀信さん大崎紀夫さんとの対談で
ビミョーに褒められてたから、きっとスゴイ人なんだろう

そんな「スゴそうな人」オーラはちっとも出てなくて
普段でも酔っぱらってるのかシラフなのか良くわからない時もあるけど
話せば話すほど、好きになる
繊細で人を楽しませずにはいられないサービス心と
冴えてる言葉
チャーミングなおじーちゃんだなあと
私ごときに思わせてくれる

やっぱりスゴイ人なんだろうなあ〜
























山田さんちへ行った時にサインまでもらってきちゃいました



2011/10/19

奇人は世界を征すーエキセントリックー

「エキセントリック」奇人は世界を征す
著者 荒俣宏

























憧れている言葉がある
「博覧強記」
(広く書物を読み、それらを非常によく記憶していること。知識が豊富なこと)

荒俣宏さんを紹介してる文には必ずこの言葉が記されている
そして「本」に使ったお金、使った時間
その情熱というか取り組みの姿勢といおうか
常軌を逸するエピソードの数々も書かれている
自分はマンガが好きだし、魚とかウニが好きだし、相当に趣味が変だから
自分自身が相当にしっかりしていないといけない。
お金持ちになるとか、モテるとか、おいしい食べ物とか
もう世間並みの幸せはあきらめよう
と、7、8歳の頃に考えたそうだ。
そして、そのように人生を歩み、現在もたくさんの著書を残していっている
時間が余るからと読書するのではない!
読書のために他の「楽しみ」をあきらめてしまうのだ!

私はもう…自分で「本が好き!」なんていってるのが、恥ずかしくてなってしまう
残念な事だけど「本」が主役の人生を行き切るには
あまりにも欲深く、あまりに俗物だ…

荒俣宏によるエキセントリックの定義とは下記のとおりだ
奇行に走る事を意味しない、まして自己を顕示することではない。
中心から外にいること。周辺にいて、中心の権威に属さない位置。
その位置を保ちながら、しかも中心を脅かす。
隠者であろうとしながらも、常に他者に影響を及ぼす存在である。
第一部でエキセントリックとして紹介されてる人たち
まず粘菌の研究者として有名な南方熊楠
年中裸で暮らし、カンシャク持ちで、お酒をたくさん飲むとかの
奇行の部分のみが世間に伝わっているが
明治初期に単身海外に出かけサーカス団に入ったりしながら
世界中をまわり、独学で19カ国語もマスターし
帰国後は在野の学者として博物学、民俗学の研究を続け
日本の博物学研究を世界的レベルに高めようとした人だ

その仲間として
植物学者の牧野富太郎、明治期から昭和初期のジャーナリスト宮武外骨
画家の岸田劉生などを取り上げている

そして水木しげるさんと一緒にパプアニューギニアへ旅した話
なぜか、清田益章さん(この頃超能力少年として話題だった)との
念写の実験の話などもある

第二部では海の向こうのエキセントリックとして
ウィリアムブレイク、スティーブン・ホーキング、アラン・チューリング
なども紹介している

私は個人的にウィリアムブレイクに興味を持っている
大江健三郎の「新しい人よ目覚めよ」という作品を読んで
ウィリアムブレイクという人物を知った
18世紀の画家であり詩人だが、作品が好きとかそういう興味ではない
彼は「幻視(ヴィジョン)」を体験する「感応者(センシティヴ)」だ
ブレイクは芸術家の持つイメージは生まれながらに備わるもので
決して後天的には獲得されないと信じていた
教育されたものではない、生まれつきもつ自前のイメージ
それを表現するものが「美術」であり「詩」である
彼にはありもしない光景が、視覚図像として細部までありありと見え
彼のほとんどの作品がこの「幻視」によるイメージを表したものだ
そして「天使」と「死んだ弟」と、霊的に話すことができた
霊媒を通さずダイレクトに話すということ、それにヒントを得て
他の専門技術者(版画の場合彫る人、刷る人、色を付ける人など)を介さないで
ダイレクトに銅板に書き込む版画の新しい技法なども発明したりしている
(ブレイクに関しては、あまりに話が逸れそうなので
また改めて書いてみようと思う)

第三部は「コレクターの奇説と愉しみ」と題して
コレクターと呼ばれる人たちの、おかしなこだわりやら
それ集めてどうすんの?って思ってしまうコレクションが紹介されている
そしてこんな一説が  
「女は現金と宝石しか集めない」傾向があると思う
これらは最初から「宝」として認定されたモノで
誰が見てもその価値を理解できる
そうでなければ女はそれを集めない
男はガラクタ玩具を集めたがる
他人にはまったく無価値に見えれば見えるほど
悲しく、嬉しい。
自分だけが価値を見つけ、宝に変えられるのだから
この悲しさが好きな人のことを「マニア」と呼ぶ
と書かれてるが…

好きになった人を妹に紹介した際に
 「ねーちゃん、マニアにもホドがある」と諭された経験を持つ私
この文章の意味がわかるような…
わかりたくないような…






2011/10/09

グアテマラの弟


「グアテマラの弟」
著者 片桐はいり

女優の片桐はいりさん
テレビで見てたら
個性的で不思議な人だなあと
思ってたけど

この本を読んだら
すごく好きになった

友達になりたい

旅のどこかでばったり会って
一緒にお酒をのんで
おかしなダンスを踊ったりしたいなあ〜





「人は見た目では無い」と簡単には言うけど
納得できない事が私には多々ある

この本の中でテレビに出始めた頃の事をこんなふうに書いてる
「今まで、もてあましていた細工の悪い四角い顔が
笑いばかりかそこそこのお金まで生む事を知ったのだ
埃をかぶったがらくたが
ちょっとしたお宝だったことを発見したような幸運である」

なかなかそんなふうに考えられる人は少ない
「演じる人」という自分とはまた違う自分を持つ事ができて
それが評価されて「仕事」になったから言える言葉なのかな
「片桐はいり」というキャラクターのインパクトは絶大だもの

顔が商売道具で、ベッピンさんだけが売りだと
衰えていく自分に納得がいかず、ちょっとつらい事も多いだろうけど
この人なんて年取れば取るほど、周りにもおかしな人が集まってきて
楽しい事が起こりそうな雰囲気に包まれている
うらやましいような、勇気づけられるような、そんな気持ちになった

このエッセイは、ある夏、片桐家の長女であるはいりさんが
年子の弟の住むグアテマラ、アンティグラを訪ね
体験した事、感じた事
そして家族を思い、その関係の変化などが主題

弟さんは学生時代にメキシコから南米の旅のあと大学院を卒業後
再び日本を離れ中米のグアテマラ共和国という国で暮らし始め
おまけにグアテマラ人の奥さんとその人の連れ子がいて
現地で語学学校やら薬屋さんやらを営んでいる 

ササイな出来事に民族性というものを感じる事は
差別的な意味合いではなく、ある
このエッセイで本物のラテンの人たちの様子を読むと
私たちが普段使う「なんか、あの人ラテン系やなあ」という意味が
まだまだ、アマイという事を教えられる
かなり、おおまかな性格の私も
ちょっと、ラテンの国の気質にはついていけないかも
と考え直さずにはいられない

目の前に待ってるお客様がいても
シエスタの時間は必ず守られる
他の事にはルーズなのにこの時間だけは厳守されるらしい
多民族が混血してるから見た目の個性が違ってるのは当り前
太った人に「ふとっちょさん」「おデブさん」的なあだ名は
ちっとも失礼な事ではなく、これも当り前
ほんの少しの仕事も分け合い
皿を洗う人はホントに皿を洗うしかしない
拭いたり、片付けたりは、また違う人の仕事
それを「効率」なんて言葉で「早く安く自分だけが儲けられるように」なんて
考え方をする人は少ないようだ

それにしても フツーの日本人はかなり窮屈に暮らしているなあと
再認識もした

おおげさでもなく、観光客目線でもなく
淡々とグアテマラでの日々を書いているが
目のつけどころが
「そうそう、もし私がその場にいても、それが一番気になるわあ」
と思う所が多い

片桐はいりさんは女優さんだし
ホントのところはわからないけど
でもきっと気の合う人のような気がした!!!